研究概要 |
サルナシポリフェノールは、in vitoでのα・グルコシダーゼ阻害作用ならびにKK・Ayマウスにおいて抗糖尿病効果を示すことが確認された。KK-Ayマウスでは、インスリン抵抗性改善因子である高分子アディポネクチンの上昇やMCP-1遺伝子発現の抑制などから、インスリン抵抗性改善作用を示すことが推察された。これらのことは、単純にα,グルコシダーゼ活性阻害によるものだけではなく、サルナシポリフェノール成分が生体内に吸収され作用したと考えられる。そこで、サルナシポリフェノールを6週間給餌し、一晩絶食したKK-Ayマウスの血清成分を、固相抽出したものと、グルクロニダーゼ/スルファターゼ処理し脱抱合したものをHPLC-DADを用いて分析した。その結果、どちらにもサルナシポリフェノール成分は確認されなかった。次に、サルナシポリフェノール溶液をWistarラットに経口投与し、投与後1時間の血漿成分について同様に処理し、HPLC-DADを用いて分析を行ったが、血漿中にサルナシポリフェノール成分は確認されなかった。サルナシポリフェノール成分は多数のポリフェノール成分を含み、そのため個々の成分は濃度が低く、吸収された後の濃度はさらに低くなるため、検出限界で確認できなったと考えられた。そこで、サルナシポリフェノールをゲルろ過により分画し、各画分を経口投与したところ、サルナシポリフェノール成分である(+)カテキン、(-)エピカテキン、プロシアニジンB2、ハイペリン、イソケルシトリンが脱抱合処理した血漿中に確認された。よって、サルナシポリフェノール中に多く含まれるポリフェノール成分は吸収され、抱合体で血液中に存在することが示唆された。以上のことから、サルナシポリフェノールの抗糖尿病作用は、腸管内でのα・グルコシダーゼ阻害と、生体内に吸収されたのちのインスリン抵抗性改善作用の両方によることが推察された。
|