大豆や魚の摂取による血清脂質濃度の低下作用機構と、大豆タンパク質と魚油を組み合わせて摂取した場合の影響を明らかにするため、肝臓と脂肪組織での脂質代謝の変化を解析した。雄SDラットを4群に分け、異なるタンパク質源(食餌重量の20%;カゼインまたは大豆タンパク質)と脂質源(パーム油15%またはパーム油5%+魚油10%)を組み合わせた食餌で21日間飼育した。カゼイン+パーム油食と比べ、魚油添加群では血清中性脂肪濃度は有意に低下し、カゼインを大豆タンパク質に置き換えた食餌群では低下傾向を示した。血清コレステロール濃度はカゼインと比べて大豆タンパク質、パーム油と比べ魚油添加食により低下し、大豆タンパク質+魚油群で最低の値を示した。肝臓の脂肪酸合成系酵素活性は魚油添加食で大きく減少し、大豆タンパク質もこれらを低下させたが、魚油存在下では大豆タンパク質による低下量は小さくなった。肝臓β-酸化系酵素活性は、一部の酵素を除いて魚油または大豆タンパク質摂取で増加し、これらの同時投与は単独摂取より高い値を示した。コレステロール合成関連酵素のmRNAレベルは大豆タンパク質摂取により抑制されたが、魚油は有意な低下作用を示さなかった。一方、コレステロール排出に関与すると考えられているATP-binding cassette transporter (ABC) G5とABCG8のmRNA量は大豆タンパク質により上昇傾向が認められ、魚油ではそのパラメータが大きく増加した。睾丸周辺脂肪組織および肩胛骨間褐色脂肪組織では、グルコース輸送体4のmRNA量は大豆タンパク質摂取により有意に増加した。大豆タンパク質と魚油の摂取は、肝臓での脂肪酸合成とβ-酸化、コレステロール合成と排出を調節することが示唆されたが、同時摂取による相互作用は肝臓脂肪酸合成系酵素以外ではほとんど見られなかった。
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