研究概要 |
2008年度は, 「トランス・サイエンス」をキーワードに研究を進めた. おもには, 基礎科1学の研究者が直面する, 社会と科学の問題をとりあげ共通する問題群があるかについて研究を進めた. 3月17日には「トランス.サイエンスにどう立ち向かうか」という研究会を行い, 地震学, 感染症, 素粒子実験, 環境問題の4つの分野で社会と科学の関係について議論を行った. 特に大型実験は社会的, 経済的, 軍事的状況によってその実現や運営が大きく変動する. 過去の例と比較して(たとえば建設途中で中止が決まったSSC加速器など)現在の社会状況がどのように不安定なのか, それを踏まえたうえで研究者として何に注意を払ってプロジェクトを進めるべきなのか等についての議論, 調査を深めた. また, 情報発信をする際に, 過去の例からどういったポイントに気をつけるべきであるかという議論を行い, 実際に2008年9月にスタートしたCERN研究所の大型実験LHCにおいて, 事前対策の検討, 日本, 世界での反響を調査した. これにおいて, 社会の中で研究者の考えがより直接的に伝わる方法, 丁寧な報道対応が重要であることが再確認された. 総じて, 理系研究者,なかでも基礎科学ベースにした研究者がどのような科学コミュニケーションを必要としているのか, 考察が深まった. 2009年度では引き続き, 各分野でのトランス・サイエンスを調査し, 基礎科学の研究者が総合的にどのような力をもつべきであるのかを調査, 研究していく.
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