本年度に実施した研究について、1 : インタビュー等、2 : 文献研究、3 : 報告・発表に分けて報告する。 1 : 5月と12月に、公開ガバナンス研究会を開催し、ローカルガバナンスにおける専門家の役割について、実践者の話を聞いて、討議した。関西工学倫理研究会のメンバーと共に社会安全学連続セミナーに参加し、主として防災におけるITとIT技術者の役割について知見を交換した。3月には、リコール問題を起こした三菱ふそうトラック・バス株式会社にインタビュー調査に行き、コンプライアンス、品質管理と技術者倫理との関連について話を伺った。 2 : 情報社会ガバナンスについての基礎的文献を収集すると共に、情報社会論の基礎という関心から言語と有意味性の問題についての数年来の見解を取りまとめ、単行本として出版した。21年度は、こうした情報社会論を踏まえ、技術者倫理を取り込んだ情報社会ガバナンス形成のための、議論を整理してまとめる。 3 : 9月に名古屋大学で開催された情報学ワークショップ2008(WiNF2008)にて、ガバナンスにおける根幹的概念である「合意」について、概念分析を行い、発表した。これは、同ワークショップの論文集として発行されている。 全体として、20年度は情報社会、そしてガバナンスに関する基礎的な研究は予定以上に進めることができたと思われる。また、現場の技術者や活動者からの話も集めることができた。21年度は、これらを取りまとめて情報社会ガバナンスの像を描き出すと共に、そこで要求される技術者の倫理を明らかにしたい。
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