本研究の目的は、(1)情報社会における専門的な情報技術者(ITスペシャリスト)の社会的役割を明らかにすること。そして、(2)こうしたITスペシャリストのための倫理教育を提案することである。(1)については、研究所や国家機関に所属し、一般市民の安全に対してパターナリスティクに気を使うという従来の科学技術者像に対して、一般市民と同じ目線で情報社会ガバナンスに積極的に参加する情報技術者像を構築した。(2)こうした社会的役割に応えるITスペシャリストの倫理教育として、ただ単に個々の規範の知識を教え込むのではなく、市民と協力して自分たちの「社会ビジョン」を構築する力、そしてこうしたビジョンに基づいて新しい規範を作り出す力を教育すべきであるとの結論に達した。
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