平成23年度の最終年は、本科研で収集した資料の整理と検討を進めた。特に、豪国のConservation volunteer Australiaの人材育成と運営の枠組みと、北米のEarthCorpsの比較に着目した。両者のヒアリング調査内容が1次資料となるため、録音した音声データについて活字化を行い、相方の枠組みや考え方について活字としての資料化を進めることに重きを置いた。 この両団体の人材育成に関する比較の中で、いくつか明らかに異なる点を抽出することができた。最も大きな点は、事業の実施目的の差異である。豪国は人口密度の低さや自然地の多さから実践型環境保全の事業運営を回すために、「エコツーリズム」を主事業として運営している。一方、北米は、教育環境の不足や帰還兵等のキャリア形成のため「教育としての奉仕活動」を事業の目的としている。両者とも国立公園や自然公園、河川などにおける外来種の除去作業等の作業を実施する点は大変類似している。しかしながら、国や市民の必要とする人材育成像の差異は、ボランティアのリクルーティングや事業経費の確保の観点から、このような差異が生じていると認められた。次に、人材育成プログラムの差異である。特に豪国の人材育成プログラムは国により標準化されており、プログラムの内容は決められており、また、認証される制度とされている。一方、北米は教育の一環として位置づけられており、団体により差異があるが、概ね各団体の専門的なサービスとして柔軟に提供されている。これらのポイントは日本と比較する場合、里地・里山や農を中心とした地域社会の中で、自立的な奉仕活動や近年のボランティア活動により育まれてきた生産と人材育成のあり方を考える上で示唆を得ることができる。それは、日本の既存システムを活かしながら、豪国や北米流の方法論をグローバルなものとして取り入れる事であろう。本研究の資料は、今後も継続して解析を進め、学会などへの発表を進める。
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