研究概要 |
地球の構成や活動を理解することは,小・中学校理科の地学分野において重要な目標である。この目標を達成する第一歩として,小・中学校の理科では身近な地域の地層観察を行い,大地の構成物質やその変動の証拠を野外で実物に触れながら学ぶこととしているが,多くの学校で実施できない状況にある。そのような状況から本研究では,小・中学校の理科の授業において,地層観察が実施できるようにするための方策を明らかにすることを目的としている。 本年度は研究計画の最終年にあたり,前年度に引き続き小・中学校の教員や大学等の研究者からの聞き取りに加え,4年間で得た標本などの整理作業,さらに研究全体のまとめを行った。 小・中学校の教員からの聞き取りにおいては,前年度までの聞き取りと同様で,中学校を中心に実施ができない個別の理由についての説明がほとんどであった。近年,研究者等が小・中学校に対して行っている組織的な支援(例えば,地層のはぎ取り標本の貸し出し)については,知らない教員がほとんどであった。中学校の理科教員であっても,分野によっては苦手意識があるため,そのような教材(素材)を避ける傾向についても,聞き取ることができた。研究者からの聞き取りにおいては,ジオパークとの連携についての意見が得られ,それらを核にして地層を観察できる場所を確保していくこと,教員研修の場とする可能性について検討した。また,地学的な災害と併せて,単元そのものを構想していくことの意義についても,今後検討すべきであるという意見があった。 地域ごとに事情があり具体的な支援方策は様々であるが,最も必要なことは研究者側も小・中学校のニーズを理解し,それにあった支援を行っていくことであり,そのためにはコーディネーターの存在が鍵となるという,ひとまずの結論を得た。
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