研究概要 |
本研究は、高等教育機関初任者教員の不安・孤独感の緩和を目指すハイブリッド型教育活動支援システムを開発し評価するものである。本年度は平成21年度を実施・評価期間と位置づけ、下記の研究活動を行った。 まず、昨年度開発した初任者教員が互いの教育研究の状況を共有し、教員同士がビデオを通し対話を行うことで不安・孤独感を低減しうるWebシステム「Talking Teachers Society(T2S)」の開発を継続した。このシステムでは、教員同士がナラティヴ・セラピーにおけるカウンセリング手法の一つである「リフレクティング・チーム」の枠組みを援用し,ビデオを通じて互いの不安や苦労を語り合うための対話ルールを提示して援助する。このような場を提供することで、教員が悩みや不安を解消しうる、新たな「ストーリ」を発見することで、彼らの不安・孤独感を緩和しうると考えた。 本年度は昨年の形成的評価を受けた開発の継続と、初任者教員対話支援システム「Aloha!」を用いた実践・評価を行った。2009年9月から2010年2月にかけて、徳島大学・香川大学の初任者教員8名の協力を仰ぎ、「Aloha!」を用いた実践を導入のためのワークショップと合わせて行い、教員個々人の不安・孤独感低減や、彼らの持つ「ストーリ」の転化がどのように起こったのか評価分析を行った。その結果、教員それぞれの不安・孤独感がある程度低減した上、教員のもつ悩みの「ストーリ」が対話を通じて変化することで、彼らの持つ悩みや不安が解消され、ひいては教育活動へのやる気向上や新しいアイデアの発見など、日々の活動変化や職場環境の改善などにつながりうることが明らかになった。この研究成果については、引き続き平成22年度に学会発表や論文化がなされる予定である。加えて、高等教育機関における教員支援に関連する学会における動向調査、高等教育機関における教員支援の実態調査を行った。
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