研究概要 |
特別支援教育における支援対象児童の問題行動は多様かつ複雑であり,テキスト・データのみでは正確に記述することが困難な場合が多い.当該研究では,教育現場での児童問題行動をWebカメラで記録し,事例データをWeb上で蓄積・共有可能な特別支援教育事例データベース・システムを構築した.システムの利点は,以下のとおりである.(1)Webカメラは授業中,ワイヤレスマウスにより記録が開始されると,20秒間遡りビデオ記録をサーバに蓄積する.これにより,通常突発的に起こる児童の問題行動をタイミング良く記録できる.(2)Webカメラで記録されたビデオ記録により,記憶が不確かな場合でも,問題行動を電子カルテに明確に記述することができる.(3)システムには最大4台のWebカメラが接続でき,問題行動を複数の角度から記録できる.これにより,単一の角度からのみでは記述が難しい問題行動についても電子カルテに明確に記述することができる.評価実験によりシステムの有用性を示し,実際の教育現場での運用においてシステムの実用性を確認した. 特別支援教育は2007年度から開始されたばかりであり,支援を必要とする児童に指導を行う小・中学校の教師や,障害児教育の専門知識を持つ特別支援学校の教師ですら,明確な指導ノウハウを持っていない場合が少なくない.当該研究で構築したシステムに蓄積された事例データに対して,教師らが協働した指導方法の検討を行うことで,一人の教師だけでは解決できない事例に対する指導方法の作成を試みている.また,このような教師らの協働において,支援を必要とする児童に対するより良い指導方法の習得,および特別支援教育そのものに対する理解の推進と知識共有が期待できる.そして,作成された指導方法を,実際の指導に反映させた効果を逐次データベースに登録することにより,問題行動に対する指導方法およびその効果の蓄積が可能である.
|