研究概要 |
本研究は、既に開発済みの「Web公開授業」を利用し、オンライン上に大学教員のための教育改善に関する新たな研修システムを構築することを通じて有効な授業改善の方略を提案し、その利用可能性や効果的な運用方法などを明らかにすることが目的である。平成20年度は、Web公開授業の実践を1授業についておこなった(10月27日〜11月10日、参加者51名)。典型的な講義形式の授業に協調学習を導入することにより改善を試みた理系授業について電子掲示板上で議論をおこない、本実践の詳細を分析中である。授業提供者からは参加者の個別の事例や助言に触れることで刺激を受けたなどポジティブな評価を得た。また、Web公開授業について、授業方法の改善に関しては以前からその有効性を指摘してきたが、今回の実践においては学問分野が近い参加者から授業内容に関する指摘があるなど、所属機関を越えたコミュニティが授業改善の有効な場として機能しうる可能性があることが示唆された。これに関連して、過去におこなったWeb公開授業実践のログ・データおよび授業提供者への半構造化インタビューの分析結果に関して、日本教育工学会(10月、上越教育大学)において研究報告をおこなった。授業映像の客観的視聴と電子掲示板における参加者の投稿の両方から,授業者に「気づき」と「リフレクション」が促されていることが示唆された。また、高等教育におけるICTをはじめとするテクノロジーを活用した大学教員研修に関する動向調査や情報収集を、関連書籍や国内のシンポジウムへの参加などを通じておこない、オンライン上の相互研修システム構築や理論構築に向けて準備を進めることができた。
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