本研究は、授業映像と電子掲示板を用いて組織を越えて集った大学教員が授業検討会を行う「Web公開授業」の実践を通じ、大学教育における有効な授業改善の方略を提案し、その利用可能性や効果的な運用方法を明らかにすることが目的である。平成22年度は、過去2年間におこなった3つの授業に対するWeb公開授業実践の知見にもとづき既存のシステムを総合的に評価するとともに、前年度までに検討した理論的枠組みをもとに、全国の大学教員が利用可能な汎用的システム(W-COS)としてシステムを再構築した。W-COSは、(1)教員が構成するオンラインコミュニティは、単一のコミュニティではなく、学問分野別や教育上の課題別などで構成可能であること、(2)授業検討会に先立ち、授業者が当該授業のコースデザインや課題等の基礎情報をあらかじめ参加者に提示し、前知識を与えることが可能であること、(3)授業検討以外のFD活動に本システムが応用できるよう、汎用的な映像投稿サイト上の映像へのリンク機能を設置したこと、などの特徴を持つ。W-COSの機能や開発の背景については、理大科学フォーラム(27巻9号)および情報教育研究集会(12月、京都テルサ)で研究成果報告をおこなった。このように、本研究最終年度までに、オンライン上の相互研修システム構築や理論構築は十分とは言えないものの、既存の「Web公開授業」システムの根本的改善をおこなうなど、本研究は一定の成果をあげることができた。残された課題として、開発したシステムを用いた研修が実質的な教育改善に役立っているかの検証、組織レベルの教育改善活動として有効に機能し得るかの検討などがあり、今後の研究における課題とする。
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