本研究では、音声認識技術を活用した教育支援方法を開発し、情報保障としての効果と広く一般的な教育効果を検証することを目的とする。音声情報の文字化は、単に障害のある学生への情報支援としての利用だけでなく、講義内容の理解を高めるツールとしての応用が可能である。 音声認識技術を活用した教育支援方法の開発では、認識率をいかにして上げるか?誤認識の編集作業をいかに効率よく負担を少なくできるか?教育効果をどのようにして上げていくか?という点がポイントになる。そこで、本年度は、「研究実施計画」に従い昨年度に構築した教育支援システムを改良・拡充し、実用性・実効性の高い教育支援システムを構築するとともに、課題整理を行った。具体的には、次のような内容のシステム開発と事例研究を遂行した。 1. リスピーク方式の情報支援システムの開発:話者の言葉を音声認識ソフトに理解しやすい言葉に通訳するリスピーク通訳者を育成し、誤認識編集を前提としない要約リスピーク方式による情報支援システムを開発するとともに、同システムの導入負担および教育効果の分析を行った。本研究代表者が担当する講義を対象に検証を行った結果、要約率80%程度で認識率93%をマークし、利用者の内容理解度も実用的なレベルに到達しうることが示せた。 2. 音声字幕付きWEB教材配信プロセスの構築 講義から配信までの時間を一週間以内に収めることを可能とするプロセスの構築をおこなった。本年度は、教員の音声をそのまま文字化するダイレクト方式とリスピーク方式による音声字幕付き教材の作成を並行して行い、双方のWEB教材配信プロセスの構築とともに課題の整理を行った。 上記1.2.の事例研究により、(1)認識率および導入負担(2)講義特性との相関(3)音声字幕化による教育効果(4)情報保障効果に定性的分析に基づく音声認識技術を活用した実用的な教育支援モデルを提案することができた。
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