研究概要 |
近年, 学習者間で相互に学習成果物を評価させる試みが行われている. 学習者が主体的に参加する学習形態において, 学習者が評価に参画することは自然であり, 評価結果を受け入れやすくする. そのため, 学習者の内省を促し, 知識の内化や深化を導き, 学習意欲や学習動機を向上させ, より積極的に学習に取り組むことなどの効果が期待される. しかし, 学習者間評価の前提の1つとして, 学習者が他の学習者を評価する能力を持っていることがあげられるが, 他者評価の能力については, これまであまり議論されてこなかった. 本研究では, 学習者の他者評価能力を可視化するツールや評価についてのコミュニケーションツールを開発することで, 学習者の他者評価能力の向上に資することを目指す. 前者は, 学習者間評価を終了した後に, 評価能力についての推定値をグラフィカルに表示したものと, 他者からの評価を表示する. 20年度は, 学習者に提示する内容を検討するために, 申請者の提案したモデルや綱目応答理論を応用した他のモデルを参考にし, 個々の学習者のもつ評価の特性を抽出する. 具体的には, 安定性, 差をつける度合い, 評定の厳しさなどのモデル化を行った. 後者は, 評価者と非評価者とのインタラクションを通して, 客観的に自身の評価能力について理解させるだけでなく, 他者に行った評価が受け入れられているかどうかを主観的にも納得させることを目指して, コミュニケーション支援機能を開発する. 20年度は,これまでのCSCLのシステムの例も調査し, 相互評価結果を用いて, 評価者と評価を受ける人のコミュニケーションのあり方とその実現方法についての設計を行った.
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