研究概要 |
本研究では,バイオリン演奏を対象にして,奏者の腕の動き,手の運び,姿勢などをモーションキャプチャーを用いて動作解析し,これと同時に奏でる音を解析し,そして動きと音を協調させた演奏上達のための教育法(コツ伝授システム)を開発する.従来の教育法は,動きに関しては指導者の動きを真似て指導するが,奏でる音に関しては感覚で指導するしかない.このような教育法に対し,我々が開発する教育法は,動きと音を定量的に評価し,それに基づく適切な教材(動画や教材ソフトウェアなど)を用いた教育法である. 本年度の研究成果は,昨年度までの弓を動かす右腕の動きと,弓とバイオリンの弦の交わり角度の観点から行っていたものに加えて,弓の速度とバイオリンから奏でる音の関係を中心に解析を行った.そのために,まず奏でる音の定量的評価を行うために調和度を定義した.これは,音が目標として出す音にどれだけ近いかを定義したもので,実際の音と,奏でる音をディジタルフィルタにより抑圧した音(雑音成分)の比で与えている.この音の評価尺度を用いて,弓速度および弓と弦のなす角度に対する音量と調和度による評価を行った.これにより,弓速度と音量の関係は,弓速度に比例して音量は大きくなるが,強くあるいは弱く弾くという場合には,同じ1つの曲線には従わなく,サウンディングポイントなどの別の要因により制御されていることが予想できる.また,弓と弦のなす角度と調和度の関係は,理想とする角度が直角の場合に調和度が高く,直角からずれるに従って調和度が下がってきていることがわかる.さらに,指導者と生徒の間でも,調和度の曲線は同じではないことがわかり,ここに経験の差が見られると予想できる.今後,今回の定量的評価を指導ヘフィードバックできる指導の効果を確認する必要がある.
|