研究概要 |
近年の大学入学志願者の社会的および教育的背景の多様化により,大学入学者選抜方法として,教科・科目別の知識や学習到達度を評価する学科試験だけでなく,受験生の多様な能力,資質,適性などを多面的に評価する総合的な試験を利用すること,およびその有効性の検証が重要な課題となってきている。このような状況に鑑み,総合試験の開発および導入に際しての諸課題のうち,特に総合問題の内容およびその特性を明らかにすること,また,広範な分野において共通に必要とされる言語運用能力を包括的に評価する総合的な試験を構築することを目的とした研究を行った。 今年度は,大学入試センター試験の英語リスニングの項目内容を言語運用力の観点から分析を行った結果,主に「必要な情報の特定」「類似物,類似情報の識別」「内容の理解」「全体的な読み」を要求していることが分かった。また,Bloomのタクソノミーに基づく評価領域を分類したところ,タクソノミーII型(解釈)の問題が多く,一部にIII型(判断)に近い問題が出題されていることが分かった。この分析結果に基づき,リスニングの問題音声部分のスクリプトを利用した筆記問題の作成可能性についての検討,およびスクリプトを材料にしたタクソノミーIII型(判断)の筆記問題の作成を行った。さらに日本語の読解表現力に関する総合的な問題との共通の枠組み(タイプ分類)を検討し,測定すべき能力を「情報の把握」「内容の理解」「推論・推察」の3分野に分けることで概ね統一することができるということが分かった。 以上の結果より,日本語の読解表現力の問題および英語の問題を共通の枠組みの下に取り扱うことが可能となり,実際に試作問題を作成することにより,上記の言語運用能力を総合的に測定する方法を具体化することができた。
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