本研究は、組織論や学習論の視角などを援用しながら、実験系のラボラトリーにおける科学的な知識生産の営みを記述・分析することを目的とするエスノグラフィ研究の試みである。研究代表者の勤務先に属するバイオ系・実験系のラボラトリーの協力を仰ぎつつ、教員・院生・研究員・事務職員等へのインタビュー、実験室活動の観察などの調査を実施することが主題である。 ラボ組織の時間軸のミクロな変化についての事例分析の試みは、「実験系研究室における差異化と微視的変化をめぐって-大学院大学のバイオ系ラボラトリーの『のれん分け』の事例から」と題する論考として投稿・査読を経てジャーナル(九州人類学会報)に発表された。 本年度も引き続き、科学技術社会論を専門とする研究者、科学技術に関心をもつ人類学・社会学の専門家たちと学会・研究会等で活発に議論を交わした。米国で開催された4S(The Society for Social Studies of Science)参加の機会を通じて、海外の研究者たちとも交流を広げ、国内でも、科学技術と人類学についてのセッションを組織するなどして(北陸人類学研究会)議論を重ねた。 そうした議論を積み重ねる中で、実験系ラボラトリーと、産業界との関係やネットワークという観点の重要性についても考えが及ぶに至り、そうした観点から、今年度は、企業の研究組織(実験系ラボラトリーの出身者が働く企業や、研究代表者の勤務先に属する社会人学生の所属する企業の研究所)についての現場調査も合わせて行った。
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