本研究は、組織論や学習論の視角などを援用しながら、実験系のラボラトリー(ラボ)における科学的な知識生産の営みを記述・分析することを目的とするエスノグラフィ研究の試みであった。22年度も引き続き、バイオ系ラボの比較・調査を継続した(勤務先、東京電機大学、英国Lancaster大学のラボ)。 11月には指導院生(社会人)が「ライフサイエンス分野におけるラボラトリー=スタディーズの検討」という研究課題にて柿内賢信記念賞研究助成金を受賞(伊藤は共同研究者)し、バイオ・ライフサイエンス系研究の、他とは異なる個別性に留意しつつ、調査研究を更に前に進めることとなった。当該指導院生を含め、企業所属の研究者・実務者、およびバイオ系コンサルタント等と勉強会を通じ、政策との関わり、教育やラボ運営をめぐって議論のブラッシュアップを行った。また、共同調査している指導院生は、徒弟モデル・学校モデル・工場モデルの3つでラボを分析する方途を提案した修士論文を纏め、一定の評価を得た。 2-3月、客員研究員として滞在したLancaster大学Centre for Science Studiesでは、昨年・一昨年発表した論考を英語要約し、研究者たちと議論を重ねた。また、短期訪問したCambridge大学でもラボのエスノグラフィ調査に従事する研究者等と交流を行った。さらにLancaseter大学ではDivision of Biomedical and Life Sciences (School of Health and Medicine)においてバイオ(医学)系研究者のラボを視察、インタビューを行うなど、今後の比較調査対象の拡張に資する調査研究をおこなった。 なお、編著『ラボラトリー=スタディーズをひらくために』は、ニーズもあり、近々新装出版を予定している。
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