研究課題
生物が生命を維持するためには塩の摂取が必要不可欠である。現在、世界中で1年間に約1億8千万トンの塩が生産されているが、塩の生産は、岩塩や塩湖など海水以外の塩資源が主であり、海水由来の塩は全体の約1/4である。岩塩や塩湖の存在しない日本では、塩の生産の起源は海水である。日本では、古代の塩のひとつに藻塩と呼ばれる海藻や海水を利用して得られた塩がある。製塩遺跡として考えられる遺跡には、製塩土器と呼ばれる塩作りに利用された遺物が多数出土されている。森(1995)は太平洋沿岸で発掘された製塩土器の付着物やかん水溜に付着した沈殿物中の試料中の珪藻殻数を分析し、検出した珪藻は沿岸地帯の海産付着生の珪藻(Cocconeis scutellum)でほとんど占められていることを明らかにした。この海産付着生の珪藻の検出は発掘遺跡で藻塩の製造を示唆した証拠とされた。しかし、その遺跡で海藻を用いた化学的な証拠は、珪藻分析以外はないことが現状である。よって、著者は、製塩遺跡で出土された遺物中(製塩土器およびかん水溜)の付着物に含有される元素および環境放射能などから付着物の起源を推定し、付着物が海生由来であることの妥当性を検討することを目的とした。H20年度は、以下の2点の実験を行い、研究成果を得た。1. 同遺跡で発掘された付着物の分析手法の検討を行い、試料中の環境放射能および同位体比を反映する分離手法の検討を行った。2. 松崎遺跡で発掘されたかん水溜めに付着した付着物の起源を次の環境放射能および同位体比から推測し、付着物の起源が海生であることを証明した。
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Appl. Radiat.Isot.
Proceedings of the Seventh Workshop on Environmental Radioactivity 9
ページ: 149-154