研究概要 |
本研究の主目的は異なる基盤岩石からなる山地小流域において,水文地形プロセスの観測とTCN年代法や地球化学的物質収支法を組み合わせることで,風化・侵食速度,水文地形プロセス,谷の発生条件の相互関係を明らかにすることである. 平成21年度の研究計画は(1)加速器質量分析(AMS)による長期侵食・風化速度測定,(2)各水文観測・風化実験の継続である.足尾山地の各試験流域で採取された土砂について,AMSによる侵食速度の測定を実施し,最近数万年間の平均侵食速度の値を得ることに成功した。このデータと現在実施している水文地形プロセスの観測結果と比較することにより,これらの流域で長期間にはたらいた主要な侵食プロセスを解明する.長野県松本市のカコウ岩流域で土砂を採取し,XRFによる化学成分分析を実施した.得られたデータをすでに取得済みの長期侵食速度のデータと照らし合わせることで,風化速度の推定を行った.その結果,起伏の小さい小流域で全削剥の6割程度の高い割合が化学的削剥によってなされることが明らかとなった.さらに,小流域の平均傾斜が増加するとともに,化学的削剥速度が全削剥速度に占める割合(CDF)が著しく減少することを突き止めた.
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