研究概要 |
本研究の目的は,欧州都市モデルを導入した日本の都市再生政策の問題点を提起して,経済活性化と環境負荷軽減を両立させる日本型の都市再生政策の構築を目指すことである.そのために,GIS(地理情報システム)を援用しつつ,事業所や住居の集積が経済活性化と環境負荷軽減の効果をもたらすメカニズムを実証的に解明する. 平成22年度は,前年度までに進めた分析結果を踏まえて,東京・大阪・名古屋の三大都市圏を対象地域として分析を行い,三大都市を比較することによって各都市の特性と問題点を明らかにした.建築物のデジタル空間データ,国勢調査や事業所・企業統計調査等の社会経済的指標となる統計データ,都市計画関連法令,同区域設定などに関する資料をもとに,都市圏における空間利用の高度化を定量的に測定した.そして,事業所統計における就業者数の空間的分布の変化から,対面接触活動の可能性の変化をGISのネットワーク分析によって測定して,事業所間の対面接触活動に関わる経済的・環境的コストの変化を定量的に明らかにした.さらに,事業所や人口の空間的分布から地区間通勤流動量を推定するモデルを構築して,通勤流動の変化から温室効果ガス排出量をベースとする環境負荷の測定を行った.分析の結果,各都市圏において差異はあるものの,都心において垂直的な空間利用が急激に高度化している一方で,郊外において未だに都市的土地利用の拡大は止まっておらず,都市域全体としての環境負荷が高まり続けていることを明らかにした.今後の人口減少時代を踏まえた,都心と郊外とをリンクさせるより強力な都市圏政策が求められる.
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