本年度は、まず、これまで使用してきた並列計算機のIntelのPentium4プロセッサーに最適化されていた「都市気候モデル」を新たに導入した計算機のプロセッサー(Intel Xeon)用にチューニングを行い、最適化を行った。 次に、水平解像度が約10kmという高解像度のメソ客観解析データが利用できる2001年以降を対象に統計解析を行い、関東における都市型集中豪雨と関係が深いといわれるE-S型風系日を抽出した。E-S型風系とは、相模湾から南風と鹿島灘からの東風が東京付近で収束するような風系である。 E-S型風系日の都市型集中豪雨日を対象に現在の土地利用と都市を森林に置き換えた土地利用でシミュレーションを行い、都市が風系に及ぼす影響を考察した。関東地方の風系に及ぼす都市の影響は大きくないが、都市が都市部周囲の風を変化させ収束を強めていることが分かった。 また、館野の高層気象観測データを用いた一般化シミュレーションによると、強雨の発生に重要と言われている鹿島灘からの東風が生じなかった。これは、この東風が太平洋上の気圧場の影響で生じているためと考えられる。さらに、データ同化を行わないシミュレーションでは、東風が生じなかったことから、この東風は熱的局地循環とは別のプロセスによって吹走していると考えられる。
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