研究概要 |
本研究では,現地調査と衛星データから中央アジアの天山山脈における最近の氷河変動と氷河湖の現状を明らかにすることを目的としている.平成21年度におこなった研究内容,意義,重要性を以下に記す. 1. 衛星画像解析による氷河湖分布と氷河湖決壊洪水:2000年に以降に撮影されたランドサット,2006-2008年のALOSデータを用いて,キルギスタン北西部のテスケイ・アラトー山脈の氷河湖の分布と拡大速度を調べた.多くの氷河湖のうち0.001km2/yearで拡大している氷河湖はわずか4つであった.また,クンゴイ・アラトー山脈とイリ・アラトー山脈の320の氷河湖を計測し,この地域で最大速度の氷河湖は0.005km/yearで拡大していることがわかった.これら山脈の氷河湖の拡大速度は,ヒマラヤの0.02-0.01km2/yearに比べかなり小さい. 2. 衛星画像と現地調査によるズンダン西氷河湖の決壊洪水の調査結果:2008年7月24目にキルギスタン北西部のテスケイ・アラトー山脈のズンダン西氷河湖で氷河湖決壊が生じた.衛星データと現地調査から,この氷河湖はわずか2カ月半で出現し,決壊したことが分かった.この氷河湖は,氷河湖を堰き止めるアイスコアードモレーン内部の水路から排水された急激な氷河湖形成は,冬季に水路が凍結や水路の内部崩壊により水路がふさがることが原因である。氷河の融解量観測をおこなっているテスケイ・アラトー山脈のチョング・クズルスー流域では,2006~2009年の間で2008年の融解量がかなり多かった. 3. 現地調査による氷河湖決壊の危険度評価:キルギス・アラトー山脈のタクルトール氷河湖が2009年6月に決壊した.現地調査では,地中レーダー探査と弾性波探査をおこない,デッドアイスの氷体の厚さや湖の分布を確認した.また,GPSを用いて氷河湖周辺の測量やボートと魚群探査機を用いて湖盆図作成をおこなった.
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