研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き,地中レーダ探査,ハンドオーガーによる分析試料の採取と地層観察,OSL年代測定,調査成果のとりまとめを行う.4月の5泊6日の現地調査では,予め環境省と文化庁双方の土砂採取許可を得ていた20地点で,ハンドオーガーにより2~15m深のボーリングを行い,OSL年代測定に用いる光遮蔽砂試料と粒度分析試料を採取した.また,鳥取砂丘の自然公園内における1測線で地中レーダ探査を行った.5月の現地調査では,砂丘西部の鳥取大学乾燥地研究センター内の4測線で地中レーダ探査を行い,その測線上14地点で3~8m深のボーリングから試料を採取した.調査前には,共同研究者と打ち合わせを行い,共蓍で鳥取砂丘の地中レーダ断面に関する学会発表を行った.6・7月は,現地で採取した粒度分析試料合計約300点について,沈降管法による粒度分析,色度測定を行った.さらに,採取したOSL年代試料50点を暗室において小型の光遮蔽容器に詰め替えた.8~3月は,JSPS海外特別研究員の海岸派遣により英国シェフィールド大学で在外研究を行い,そこで鳥取砂丘で採取した試料のOSL年代測定を行った.9月にはイタリアでの国際学会で地中レーダ断面についての発表を行った.2年にわたる研究の結果,鳥取砂丘の砂のうち古砂丘以外の大部分は,400年内以降に再移動・再堆積していることが判明した.砂丘堆積物の堆積年代は100~200年前と300~350年前ごろに集中しており,これらの時期に飛砂活動が高まったことが明らかになった.特に,300~350年前は,マウンダー極小期と呼ばれる小氷期の中でも特に寒さの厳しかった時期で,そういった全球的な気候変動により,例えば冬季の季節風が強まるなど,鳥取の局所的な気候も影響を受け,砂丘における飛砂活動が変動したといえる.
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