研究概要 |
気象衛星ひまわり6号(MTSAT-1R)の中間赤外データから雲粒の大きさの指標となる3.7ミクロン帯雲反射率および雲粒有効半径を算出する手法を確立した. 中間赤外データは従前のひまわりシリーズにはなく6号から新たに搭載されたセンサである. 算出された雲粒有効半径の値を, 周回軌道衛星TerraおよびAquaに搭載されている高波長分解能・高空間解像度のセンサMODISから得られる雲粒有効半径と比較したところ, 妥当なものであることが確認できた. 算出手法について日本気象学会で発表した. ひまわりは静止衛星であるので, TerraやAquaではできない雲粒の大きさの変化を1時間間隔で追跡することができる. 東アジア域から北西太平洋における雲粒有効半径の日変化を解析したところ, 海上で大きく陸上で小さいという一般的な特徴を示せただけでなく, 海上と陸上で異なる日変化を呈していることが新たにわかった. 一方, 中国の気象衛星FY2-Cにもひまわりと同様の中間赤外のセンサが搭載されている. FY2-Cはひまわりの有効視野外となる中央アジアから南アジアの地域の観測が可能であり, 日中の静止衛星のデータを用いることにより, アジア域の雲性状環境の解析が可能となる. 今年度はその準備段階として, 京都大学防災研究所で受信しているFY2-Cデータから中間赤外のデータを扱えるように処理プログラムを改良した. 静止軌道衛星による観測は, カバー領域が広大かつ時間間隔が密であるため, 長期的な影響を評価するには, 膨大なデータ記憶領域が必要となる. 大容量データアーカイバの導入により, 次年度以降の雲性状環境の長期的な変動を解析するために必要な研究環境を整備した.
|