H21年度は、高い炭素蓄積能を有する火山灰土壌(アロフェン質黒ぼく土)に対象を絞り、表層土壌環境において存在しうるほぼ最大と最小の炭素含有量、その中間である土壌試料を採取し、分解と蓄積プロセスを比較検討した。異なる温度条件における培養実験から微生物による有機物分解速度とその温度依存性および微生物バイオマスを求めた。同時に、それぞれの土壌試料を物理分画し、異なるメカニズムによって蓄積している土壌有機物量を調べた。これにより、少なくとも調査した火山灰土壌においては、全炭素含量がある程度以上であれば、土壌炭素分解の温度依存性はほぼ一定であることが分かった。一方、有機物供給量が少なく、全炭素量が低い土壌では、残存する土壌有機物には難分解性の芳香族炭素の割合が高まるため、分解の温度依存性は高まることが示され、土壌炭素量と分解の温度応答には非線形的な関係があることを突き止めた。これは、土壌炭素プールの温暖化応答に関する新しい知見であり、国際学会で発表した。現在、国際学術雑誌に投稿準備中である。土壌有機物の長期的な動態および安定化メカニズムについては、まだ未解明であるため、更に比重画分の理化学分析を行う予定である。 また、本研究課題の一環として、米国の研究者らと上記の分画法を用いた土壌有機物蓄積プロセス解明についての共同研究を行っており、トップクラスの国際学術誌での発表に繋がった。
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