研究課題
日本を含む東アジア地域では冬季から春季にかけて西風が卓越し、黄砂および大陸で発生した大気汚染物質が顕著に輸送される。黄砂の飛来時においては、アルミニウムや鉄等土壌に起源を持つ元素のみならず、鉛などの人体に有害な金属成分も高濃度になると報告されている。単一エアロゾル粒子の化学成分を実時間で測定するレーザーイオン化個別粒子質量分析計を用いて、鉛と発がん性物質である多環芳香族類(PAHs)を主なターゲットとし、春季の長崎県福江島大気環境観測施設において地上観測を行った。2010年4月13日から5月7日までの間に観測されたエアロゾル粒子のデータを解析した結果、観測された全粒子の4.7%に鉛が含まれていた。福江島に黄砂が飛来していた期間(黄砂期)とそうでない期間(非黄砂期)を区別して解析を行うと、鉛を含む粒子の割合は非黄砂期には3.5%であったが、黄砂期にはその割合が5.9%に増加していた。黄砂期および非黄砂期に観測された鉛を含む粒子の個別粒子質量スペクトルを比較すると、黄砂期に観測された鉛を含む粒子には亜鉛、錫などが含まれていたが、非黄砂期にはこれらの成分は含まれていなかった。亜鉛、錫はそれぞれ石炭燃焼やはんだ燃焼などによって生じることから、黄砂期に観測された鉛を含む粒子は石炭燃焼および産業廃棄物燃焼起源であると考えられる。観測期間においてPAHsが含まれていた質量スペクトルの数は46個であった。黄砂期間にPAHsの検出個数が微増する傾向が見えた。検出されたPAHsは主に3員環から5員環であった。PAHsを含む粒子を黄砂期と非黄砂期に分けて個別粒子質量スペクトルを比較すると、黄砂期にはPAHsと鉛が混合している粒子が存在するが、非黄砂期にはほとんど存在しない事がわかった。
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Chemistry Letters
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