研究課題
本年度は、研究所の移転とそれに伴う整備で低温室および実験室の利用が限られたため、主に取得データの解析を進めた。対象となった気候ステージは、間氷期(完新世、イーミアン間氷期)、最終氷期(最終氷期末期(LGM)、亜氷期(Marine Isotoe Stae (MIS)4・MIS5d)、亜間氷期(MIS3・MIS5a))、さらに最終氷期の前の氷期(MIS7dから7cへの移行期)である。陸域起源物質であるダスト(固体微小粒子)および陸域起源のみに特化した非海塩性カルシウムイオン(nssCa^<2+>)の数年スケールでの濃度および変動は、これまで本研究課題で明らかにたったように、温暖期(完新世、イーミアン間氷期)は低濃度かつ相対的変動は大、寒冷期は高濃度かっ相対的変動は小だった。今回ダスト濃度でのスペクトル解析を試みた結果、温暖期では当該コア深度での年層相当厚に対応する周期が見られた。このことは温暖期のダスト濃度の変動には年相当の周期性のある可能性を示唆する。気候ステージごとにダストとnssCa^<2+>の濃度比の平均値を、気温の指標であるδ<18>^Oやグローバルな海氷準変動ど比較した結果、いずれも正の相関が見られた(δ<18>^O:r=0.94、海水準:r=0.42、ただしイーミアンを除くとr=0.69)。これらの結果から、ドームふじを含む南極内陸部への陸域起源物質の供給源として考えられている南アメリカ・パタゴニア沖の大陸棚の表層堆積物の均一性に由来している可能性が示唆された。一方、大陸棚の露出面積の小さい温暖期には、季節レベルでの地表面状態の変化やパタゴニア以外からの陸域起源物質の寄与も起因していることも考えられた。今回十分に検討ができなかうたが、今後ダストのストロンチウム等の同位体解析によって、情報の乏しい温暖期の陸城起源物質の供給地城が寒冷期と異なるか否か、明らかにできる可能性がある。
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Journal of Glaciology 55
ページ: 552-562
南極資料 53
ページ: 259-282