研究課題
当該年度は、1.懸濁物質に対するウィルスの吸着しやすさを、質的・量的な観点から評価し、2.懸濁物質へのウイルスの吸着が残存性・生残性に影響を与えるのかどうかを明らかにすることを目的とした。特にこれまでの研究から、濁水中や堆積物の巻き上げ水に含まれる鉱物に研究対象とするKHVが良く吸着することが明らかになっているため、鉱物への吸着にも着目した。1.・琵琶湖内湖の伊庭内湖において、プランクトンネットNXX17で採取した懸濁物質からKHVが検出され、プランクトンにKHVが吸着していることが示唆された。検出されたKHV量はRotiferaの数と正の相関があり、これらの結果をまとめて論文に発表した。また、異なる粒子サイズの鉱物を含む堆積物からKHVの検出を行った結果、主に砂利を含む堆積物からは単発的に、泥を多く含む堆積物からは年間を通して検出される場合とほとんど検出されない場合があった。KHVの分布には堆積物中の鉱物粒子のサイズだけでなく、堆積物に含まれる物質や環境にも影響されることが示唆された。・異なるサイズの鉱物へのKHV吸着実験の解析から、水中KHV濃度が10^5-10^6/Lの場合、鉱物由来の懸濁物質へのKHVの吸着は水中KHV濃度に顕著な変化を与えないことが明らかとなった。一方、水中KHVが検出限界以下となる低濃度の場合、鉱物へ吸着したKHVの遊離は水中KHV量の顕著な増加を引き起こすことが明らかになった。このことから、KHVの懸濁物質への吸着はリザバーとしての役割が大きいことが示唆された。2.懸濁物質へのウイルスの吸着が残存性・生残性に影響を与えるのかどうかを明らかにするため、KHVの感染力を定量的に測定する方法としてプラークアッセイによる検出方法の確立を試みた。バクテリアやカビなどの夾雑物を含む懸濁物質や堆積物からのKHVの検出方法を検討した。
すべて 2011
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Research in Veterinary Science
巻: 90 ページ: 530-532
The ISME Journal
巻: 5 ページ: 244-251