研究概要 |
気象モデルの高精度化と検証を行なうために2007年7月に大阪において行なったTERRA衛星ASTERデータによる衛星-地上同期観測のデータを解析した。まず可視・近赤外バンドの3つのバンドのデータを波長積分し、アルベドを算出した。その際、本研究では標準的な日射スペクトルのデータを用いて、各バンドについて分光反射率データから反射量を計算した後、波長積分した上で入射量との比をアルベドとした。次に熱赤外バンドについて、WVSアルゴリズムにより大気補正を行ない、また温度-放射率分離の処理を行なうことで地表面温度と地表面放射率のデータを得た。これらの結果得られたアルベドと放射率は気象モデルの地表面パラメータとして、地表面温度は検証データとして、それぞれ気象シミュレーションを行なう際に利用可能である。次に地表面蒸発散によるヒートアイランド緩和効果について、メソスケール気象モデル(CSU-MM)を用いて数値シミュレーションを行なった。条件変化パラメータとして蒸発効率を変化させ、地表面を完全湿潤面として計算を行なったところ、夏季晴天日には日中に約2℃の気温低下が生じることが示された。ただしその際に必要な水分蒸発量、を算出した結果、10km四方の地表面を1日間、完全湿潤面とするためには約670,000m^3の水が必要であることが示された。この結果から、人為的な散水では広域の都市の暑熱環境を緩和することは困難であると考えられるため、今後、降水量や植生による蒸散量を考慮して熱収支と水収支の両面から観測やシミュレーションを行なうことが肝要であることが示唆された。
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