現在行われている大気環境観測はメソスケールでの定点観測によるものであるため、必ずしも住民の生活環境に直結した情報とは言い難い。本研究は、大気中の粒子状有害物質の多点モニタリングに適する簡易型ミクロ繊維シート捕集材(MFS)を用いたオリジナルなモニタリング法を用いて生活環境大気中の多点同時モニタリングを行い、住民の生活環境規模を対象ユニットとするような大気環境情報支援システムを構築することを目的としている。 平成22年度は、平成21年度から実施しているモデル地域の「岩手県一関市竹山~三反田地区」32地点でMFSを用いた調査を継続して行った。毎月1週間の多環芳香族炭化水素類(PAHs)モニタリングを行った結果、4車線道路沿い>2車線>1車線の順にPAHs量が有意に高く、自動車排ガスの影響が確認された。また、同時測定したアクティブサンプラー結果との比較により各測定地点での大気中PAHsリスクを推測した結果、リスクの高さもモニタリング結果と同様に4車線道路沿い>2車線>1車線の順にリスクが高い結果であった。全ての道路沿道において冬季>夏季>秋季の順でリスクが高い季節変動を示し、多くの測定地点では、大気中PAHsによるリスクが看過できないレベル(10^<-5>リスクレベル)にあることが示唆された。 さらに、GISを用いて生活圏規模でのPAHs(7物質)の経月推定濃度マップを作製し、大気中PAHsリスクの推察を行った。住民の生活環境地域でも10^<-5>リスクレベルを超えているエリアが分布していることが推察された。GISにより可視化することで各戸単位のエリアを含むPAHsの大気環境リスクを把握することが可能となった。
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