研究概要 |
本年度は、最終年度として、環境コミュニケーション機能の分析を行って、研究のとりまとめを行う予定であったが、2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発の事故を踏まえて、研究の内容を修正した。 当初予定していた、福島県内の流域とその地域住民を対象とした、仮想集水域指標についての質問紙調査は、現実的には、原発災害に苦しむ福島県民を対象に、実施すべき状況にはなかった。 福島県全体の社会経済活動に関する総合的な環境指標として、「物質フロー」に関する指標を取り上げて、その改善状況を把握するとともに、その問題点を指摘して、論文にまとめた。物質フローに関する環境指標は改善傾向にあるものの、火力発電の増加などにより物質量が増えているものがあることが明らかになった。同時に、原発のウラン燃料や放射性廃棄物など、物質量は小さいが質的に危険な物質をそのまま計上することの問題点に言及した。 環境指標の活用については、持続可能な消費に関する国際会議(2011年11月6~8日、ドイツ・ハンブルク)へ参加し,エコロジカル・フットプリント指標等の役割に関する議論を行った。福島第一原発の事故を踏まえて、従来の環境指標で評価できていた側面とそうでなかった側面を再確認した。また、日本環境教育学会では、原子力発電の教育および広報において、二酸化炭素の排出量という環境指標における優位性が、放射性廃棄物量という環境指標における劣位性に比して強調されていた側面を指摘し、公平性を追求することの重要性を問うた。
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