平成21年度は、前年度構築した静学モデルを動学化し二段階の動学ゲームを構築した。モデル設定上重要な点は、第一に、異時点間の外部不経済を導入することである。現時点の過剰排出による利得は、損害が将来起こるため対策を先送りすることで、現在より多くのエネルギーを消費することができることにある。第二に、現在と将来政権をとる政党が異なる場合、現在大量にエネルギーを消費することで発生する将来での対策費用が、異なる政権の負担になることから発生するフリーライディング効果が発生する。第三に、第一期においては、将来の政権選択に不確実性を導入しておくこと、つまり第二期に低所得者、或いは高所得者どちらが政権をとるか分からない、という状況であったので、そのようにモデルを設定した。後向き帰納法で考えると、将来どちらが政権をとるか現時点では予見できないとすると、第一期の政権は、二期目に再選できずに支持層の利得が減少することをおそれ、過剰排出(または過少排出)といった、より一層自らの利得を増加させるような行動をとる可能性があることが分かった。 理論モデルの構築完了後、数理モデルの現実妥当性を検証するため、シミュレーション分析を行った。具体的には、気候変動問題において2050年までのCO2削減経路に対してどのような変化を与えるか、データと時間の制約上特に日本と米国に対象を絞って分析を試みることにした。シミュレーションには、計量ソフトとその拡張ソフトウェアを利用した。 なお、現在上記の結果を国際ジャーナルへの掲載に向け改訂中である。
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