ゲノム上に生じた一部の損傷は修復しきれずに複製期まで残り、DNA複製の進行を頻繁に阻害する。進行が阻害された複製フォークは細胞死を誘発するのみならず、DNAの二本鎖切断等の二次的損傷を引き起こし、ゲノム不安定性や発ガンの原因となる。この時損傷の除去を伴わず複製を再開させる機構が複製後修復(損傷トレランス)で、複製後修復は複数の損傷乗り越えポリメラーゼによってなされる損傷乗り越え複製と、メカニズムはほとんどわかっていないが新生鎖を鋳型にするテンプレートスイッチングの二つの経路からなる。RAD18は複製後修復で中心的な役割を果たし、この二つの経路の制御に関わっていると考えられているが、その詳しいメカニズムはわかっていない。この重要な問題を明らかにする為に、RAD18とテンプレートスイッチングの経路でユビキチン転移酵素(E2)として働くUbc13/Mms2複合体のプロテオーム解析を試みた。免疫沈降によりそれそれの蛋白質の結合蛋白質を精製し、nanoLC-MS/MSにより蛋白質を同定した結果、RAD18は特異的にHSP70と結合する事がわかり、IUD18とHSP70の結合の複製後修復における役割を、in situ解析やin vitroでの機能解析により解析を行った。またUbc13とMms2の免疫沈降で精製した蛋白質からは、複数のユビキチン結合酵素(E3)を含む、今までUbc13とMms2に結合する事が知られていない蛋白質を同定され、これらの蛋白質が複製後修復で栗たす役割を解析した。また、共同研究によって明らかにした機能的な相互作用より、ワーナー症候群の原因遺伝子であるWRNとRAD18が直接相互作用する事を発見し、この結合の細胞内での意義を解析した。(731字)
|