研究概要 |
放射線発がんの分子メカニズム解明のため、実験動物(ラット)の放射線誘発がんにおいて変動を示す新規偉伝子を網羅的な方法で検索し、これらの遺伝子のがん形質に関する機能解析を行った。今年度は、 1. 昨年度の培養細胞株でのノックダウン実験予備検討において細胞増殖抑制が示唆されたNRARP遺伝子について、2種類の配列のsiRNAを用いてノックダウン実験を行い、細胞増殖が抑制されることを明らかにした。アポトーシスに関連する遺伝子変化は確認できなかった。 2. 同遺伝子に関連する細胞増殖調節の分子メカニズムを解明する実験を行った。同遺伝子については、正常血管内皮細胞においてNOTCH情報伝達系およびWNT情報伝達系を調節することが最近報告された(Dev Cell 16:70-82,2009)ため、NOTCH情報伝達系およびWNT情報伝達系に着目して、がん細胞での遺伝子異常ならびに遺伝子ノックダウンに伴うこれらの情報伝達系の変化を、ウェスタンブロット法およびRT-PCRアレイ法を用いて解析した。ウェスタンブロットの適当な実験条件が見つからず、継続中である。RT-PCRアレイ法によって、細胞周期制御やNOTCHおよびWNT情報伝達系に関連する下流遺伝子の発現が変化することを明らかにした。 3. 昨年度に引き続き、ラット乳癌細胞株樹立を試みた。 これらの結果は、NRARP遺伝子が放射線誘発乳がんで高発現し、NOTCH/WNT情報伝達系を介して増殖促進に関わることを示唆している。
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