本研究における目的は、甲状腺系撹乱化学物質が、遺伝子発現レベルでの甲状腺ホルモン作用に及ぼす影響を検討することである。また、両年類変態期はホルモン作用を検討する上で非常に有用なモデルである。アフリカツメガエル幼生に甲状腺ホルモン処理する際にある種の水酸化PCBを共存させることによって、これらの物質のホルモン撹乱作用を検討することが可能である。平成20年度にマイクロアレイ解析により、これらの化学物質処理によってホルモン作用が撹乱される遺伝子群の抽出を行った。本年度はこれらの遺伝子マーカーとしての有用性の検討のため、定量的PCRによりアレイ解析の結果確認を行った。また、統計的有意に抽出された遺伝子群を用いてクラスター解析による分類、主成分分析による分類を行ったところ、きれいなグループ分れが確認出来た。このことは、今回抽出した遺伝子群は、水酸化PCB処理によって発現変動を示す遺伝子群の顕著なものであることを意味しており、遺伝子マーカーとして応用出来る可能性がある。さらにこれらの遺伝子群に機能的注釈付けを行い、統計的有意に変動している機能を検討したところ、脳の発達や細胞分化などの機能が変動していることが示唆された。これにより、変態期に劇的に幼生型から成体型に変化すると思われる脳構造、機能が水酸化PCBにより撹乱される可能性が示唆きれた。これらの遺伝子群の脳内の発現領域をより詳細に検討することにより、どのような脳機能が撹乱されているのか明らかにすることができると考えられる。
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