研究概要 |
アカギ林内に、林内Sun(断続的に光が差し込む場所 : 相対照度1.92%)と林内Shade(長時間暗い場所 ; 相対照度0.75%)を設置し、各区のアカギ実生を300個体ずつ識別し2008年6月から翌年2月まで生残を追った。その結果、7月から12月にかけて林内Sunの実生の生残数が林内Shadeに比べて増加することがわかった。翌年2月には両調査区の実生はほとんど全てが枯死した。調査期間における実生の枯死原因は、両調査区ともに茎における病原菌感染が主要因であり、病原菌の可能性がある3種が高頻度で分離された。以上のことから、7月から12月にかけて林内Sunの実生の生残が高かった理由として林内Sun実生において病原歯感染防御機構が機能していたと予想された。 病原菌感染防御に影響する要因として、実生の健康状態に関与する成長量や無機栄養成分濃度を考慮する必要がある。そこで、各調査月において実生を採取し葉部・茎部・根部に分け1) 新鮮重量、2) 無機栄養成分(P・Mg・Fe・Ca・K・Na・Al) 濃度、及び3) C・N濃度を調査した。その結果、林内Sunの実生成長量は、7月以降の葉部において林内Shadeに比べて顕著に増加することがわかった。根や茎の新鮮重量には差は確認されなかった。無機栄養成分濃度についでは、林内Shadeの葉部でP, Mg, Na濃度が高い傾向にあった。これは、林内Sunの実生葉部の成長量が顕著に増加したため、希釈効果が生じたためと考えられた。両調査区の実生のC濃度には差はみられなかったが、N濃度は葉部・茎部・根部ともに林内shadeの実生で高い傾向にあった。一般にN濃度が高くなると植物組織が脆弱化し病原菌に感染しやすくなることが知られていることから、林内Shadeの茎部は林内Sunの実生に比べて病原菌に感染しやすい状態であったと考えられた。 今後は実生の抗菌物質量を分析し、林内Sunにおける病原菌感染防御システムを探る。
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