研究概要 |
効率的リサイクル実施を目指し,アルミニウム合金ダイカストの疲労寿命を高精度で評価する手法を検討した.ダイカストは,鋳巣(空洞欠陥)に代表される鋳造欠陥を多数内包しており,特に複雑な形状を成す「引け巣クラスター」は疲労強度への影響が大きい.この引け巣クラスターの三次元構造を明らかにし,疲労強度への影響を定量化することが,本研究の目的である.平成20年度は,実験装置を開発し,実験手法の妥当性を検討した.平成21年度は,引け巣の定量的な評価を行った. (1) き裂進展試験片による画像相関法の精度検証 アルミニウム合金展伸材のき裂進展試験を行い,X線CTと画像相関法によるき裂検出精度を検証した.き裂開口変位下であれば,き裂長さ約0.5mm以上のき裂を検出できた. (2) 疲労過程追跡試験に対する画像相関法の適用 ADC12アルミニウム合金ダイカストの疲労追跡試験を行い,疲労途中のCT画像から画像相関法により,鋳巣から疲労損傷が拡がる様子を可視化できた. (3) 連続研磨から得られる三次元形状データの精度検証 連続研磨しながら金属顕微鏡による定点観察を行うため,観察位置調整用の冶具を開発し,1μmの精度で位置合わせに成功した.また,研磨条件の調整により定厚研磨に成功し,全体として約10μm精度で鋳巣の三次元形状抽出が可能となった. (4) 引け巣クラスターの定量的評価 約250枚の連続研磨画像を用いて,引け巣クラスターの三次元モデルを作成した.その線形均質化解析から,空孔率と等価弾性定数の問にほぼ線形関係があることが示された.ただし,空孔率が10%以上の場合には異方性が現れ,鋳造痔の凝固方向の影響を受けることがわかった.更に,マルチスケール解析から,引け巣クラスターの応力集中係数はガス欠陥よりも非常に高く,疲労強度への影響が極めて高いことが示された.
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