本年度は、昨年度の研究で混合培養できた糖化菌・酵母の組み合わせについて、実際のCLB(果菜屑の破砕片)が入った培養液で糖化・発酵試験できるかどうかを検討した。検討の結果、いくつかの組み合わせでは糖化菌および酵母の両方が各々培養液上層部と下層部にわかれて生育している様子が確認されたが、エタノール発生量は0.3%程度と非常に低く、さらなる培養条件の改善が必要であると示唆された。そこで、フィルターユニットを用いた"棲み分け混合培養"が可能かを検討した。すなわち、フィルターユニットの上側容器(フィルターろ過前の試料を入れる部分)にCLB(ここでは柑橘果皮抽出液)を入れ、これに糖化菌を接種して培養し、一定期間ごとに吸引ろ過で糖化液を下側容器(フィルターろ過後の試料が入る部分)に落とし、そこに酵母を接種してエタノール生産を促進させようと考えた。しかし実験の結果、糖化菌がフィルター膜をも分解して下側容器に混入し、酵母に与えられるべき糖が糖化菌によって消費されてしまうことがわかった。 他方、CLBに含まれる多糖で"ペクチン"があるが、これを構成する単糖・ガラクツロン酸を発酵できる酵母はこれまで見出されていない。そこで、本課題の混合培養に利用可能なガラクツロン酸発酵酵母の探索もあわせて行なった。野性植物の花びら部分および果実表皮を中心に酵母を探索し、まずペクチンを好気的に分解できる酵母株を12株分離することができた。次に、これらの分離株がペクチンを嫌気下で発酵できるか検討したが、発酵能を持つ株はいなかった。
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