21年度までは、セルロース分解能を持つ糸状菌について研究しており、中でも主にPenicillium属の分離株を研究してきた。しかしこれらの菌株はいずれも酵母との混合培養可能性あるいは棲分培養(フィルター膜等を介して同じ培養液中で培養する)が困難であることがわかった。他方、土壌微生物の多様性およびセルロース分解における微生物の貢献度の大きさを考えると、本研究の目的により適した種が見つかる可能性も考えられる。 これまで実験してきたセルロース分解糸状菌は液体集積培養で得られたものであったが、集積培養法では特定培養条件でよく増殖する種が分離できる長所を有する一方で、そのような種以外の多くの種が淘汰される欠点もある。そこで、集積培養法を用いないで新奇のセルロース分解微生物を分離できないか検討した。 実験の結果、多種類のセルロース分解糸状菌を分離できる高効率な微生物探索・培養を開発できた。本学演習林土壌を試料として実験したところ、一つの土壌試料からでも実に12属に渡る分解糸状菌ならびに細菌株を得ることができた。具体的には、Penicillium属、Trichoderma属、Fusarium属等の一般的な土壌糸状菌に加え、Nectria属、Bionectria属、Talaromyces属、Chloridium属、Gongronella属、Cunninghamella属、Epicoccum属の糸状菌株、そしてBurkholderia属に加えてKitasatospora属の細菌株が得られた。現在、個々の株の分解活性を詳細に分析中であるが、セルロースのみならずキシランやリグニンに対する分解能を併せ持つ株が見つかっており、来年度はこれらの株と酵母を用いた糖化・発酵法について再度検討してみる計画である。
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