入射する光の波長に直接共鳴を有さない金属ナノ構造のプラズモン励起(可視域)について検討を行うため、本年度は昨年度行ったサイズの異なる金属ナノ構造間に作用するプラズモンの電磁的な相互作用の解明に関する研究を基に、導電性を有する基板上にナノギャップを有する金ナノ構造を精緻に作製する方法の最適化を行った。電子線リソグラフィー時におけるドーズ量をこれまでの研究の約4~5倍の強度に相当する約600μC/cm^2とし、現像時間を30分から、わずか2秒(10℃)に短縮することで高精細に、且つ金属ナノブロック構造のエッジをシャープに作製することが可能であることを見出した。これにより、これまで3nm以下のナノギャップ幅を有する構造を作製して、ギャップ幅を電子顕微鏡などによって正しく評価することが困難であったが、本研究において改善された方法では、構造のエッジがシャープになるにとにより、その観察も容易に行うことが可能となった。本年度は、赤外光を効率良く捕集するアンテナ構造を作製し、その光学特性を評価するとともに、外側から中心方向に徐々にサイズを小さく設計した金属ナノ構造(三角形柱)を2nmの構造間距離で多数配列した構造を作製した。また、時間領域差分法による電磁場解析のシミュレーションによりプラズモンが伝搬される様子や光電場増強現象について詳細に検討を行った。これらの成果は、次年度計画している発光計測や光エネルギー変換系の構築において有用なな知見となるものと考えられる。
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