研究概要 |
本年度は、金よりも長寿命なプラズモンの位相緩和時間を有する銀のナノ構造体を金構造体に精緻に近接させた金-銀ヘテロダイマー構造(共鳴波長はこれまでと同様に異なる)を作製し、光学特性や位相緩和時間の変化を実験および理論の観点から追跡し、構造間のエネルギー移動による位相緩和時間の長寿命化と高い光電場増強場を誘起する現象を見いだした。金-銀ヘテロダイマー構造の作製は、電子線描画装置による2回描画により行った。ガラス基板上に電子ビーム露光用のポジ型レジストをスピンコートして、描画および現像を行い、銀を成膜してリフトオフにより銀のナノブロック構造を作製した。次に、再びレジストをコートして、2回目の描画を行い、現像、金成膜、リフトオフと一連のプロセスを繰り返して金-銀ヘテロダイマー構造を作製した。作製したブロック構造のサイズは、縦横100nm厚さ40nmで、ギャップ幅は6,54,154nmとした。作製した金-銀ヘテロダイマー構造のプラズモン共鳴スペクトルは、入射光偏光条件がダイマー構造に対して平行である場合、ギャップ幅が154nmから6nmに減少すると共鳴スペクトルが左右に分裂し、長波長側の金ナノブロック構造の共鳴スペクトルが顕著に増大することが明らかになった。また、時間領域差分法によるシミュレーション解析から、6nmのギャップ構造では銀構造の位相緩和時間に引きずられて、金構造の位相緩和時間が増加した。これらの結果から、銀ナノ構造を金構造の近くに配置すると、双極子-双極子相互作用により共鳴エネルギー移動が起こり、金ナノ構造体の位相緩和時間の長寿命化が誘起されることが示唆された。 また、2光子吸収などの非線形過程を介さないで、近赤外光照射によりプラズモン増強に基づく光電変換を実現し、アップコンバージョンシステムの構築を達成した。
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