研究概要 |
ゼオライトLSXでは,内径約0.7nmのβケージと内径約1.3nmのスーパーケージがそれぞれダイアモンド構造で配列している.LSXの1ユニット中には合計12個のNa^+およびK^+の陽イオンが分布しており,そこにK原子を吸蔵することによってケージ内にクラスターが形成される.Na-K合金クラスターの平均組成はユニット当たりNa_xK_<12-x+n>と書ける.ここでnが吸蔵数であり,クラスターに含まれるs電子数に等しい.本課題のこれまでの研究により,Na含有量xが4以下の試料ではK吸蔵量nに依存してフェリ磁性が発現し,またその性質はXの値に依存して系統的に変化することが分かっている.本年度の研究では,Na含有量Xをさらに増やしたx=6.2および7.8の試料を作成し,K吸蔵量nを全範囲で細かく変化させて,磁気的・光学的性質を詳しく調べた.x=6.2の試料ではP型のフェリ磁性が7.6≦n≦8.6の範囲で発現することを明らかになった.一方,x=7.8では全K吸蔵量領域でフェリ磁性秩序が発現しないことが分かった.Na含有量を増やすとクラスターの電子格子相互作用が増大し,スピン一重項状態が安定化されるためにフェリ磁性が消失したと考えた.本年度の研究により,LSX中のNa-Kクラスターが示すフェリ磁性の磁気相図の全体像が明らかになった.また,関連物質であるソーダライト中のアルカリ金属クラスターが示す反強磁性について,ミュオンスピン回転による研究成果を論文として公表した.
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