研究概要 |
電界放出型電子銃から放出される電子線が高い干渉性を有しており,この高い干渉性を利用して電子波の干渉実験を行うことができる.電子銃から発生した波面の揃った電子波が,複合ナノワイヤーを通過後,電子線バイプリズムによって参照波と重なり,ホログラム(電子波干渉パターン)を形成する.得られた電子線ホログラムからデジタル画像処理によって位相再生像を得ることで物体の位相像を得ることができる.電子線ホログラフィは磁性材料内部の磁束観察や半導体の内部ポテンシャルの測定に応用されており,多くの大学・企業がこの手法を取り入れつつある.電子線ホログラフィと電子線トモグラフィを組み合わせたのが電子線ホログラフィックトモグラフィであり,原理的に3次元の位相像の取得を行うことができる.しかしながら,試料高角傾斜時に試料の厚みや試料ホルダーがポールピースに干渉するなどの機械的制限により,試料投影角度が制限される.試料の傾斜角の制限による情報の欠落部"missing wedge"による影響や一連のホログラムの取得が手作業であること,複雑な画像処理が伴うことから一般的に用いられていない. 本年度では,代表的な球状ナノ物質としてラテックス粒子を用いることで,電子線ホログラフィックトモグラフィの定量性について検討した.その結果、3次元で取りたいプロファイルをホルダー回転軸状に置けば,比較的良好なデータが得られることがわかった.この実験は,さらなる球面収差補正電子線トモグラフィに向けて,"missing wedge"の定量評価に与える影響について再確認させられると共に,その解決法を示唆している.
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