研究概要 |
単一量子ドットおよび有機発光性色素からなるナノ構造体を作製し、単一量子ドットを光励起に伴うエネルギードナーとすることにより、ナノ構造体の光アンチバンチング挙動について知見を得ることを研究の目的とした。本年度は以下の2項目について検討した。1. 単一量子トッドのアンチバンチング挙動とサイズおよび励起レーザーパルス幅(100ps, 200fs)の相関。2. 単一量子ドット-有機発光性色素複合ナノ構造体の発光挙動。1に関しては、粒径の異なる2種類のCdSe/ZnS量子ドットを用い検討した。アンチバンチング挙動はサイズと明確な相関があり、単一量子ドット内に同数の励起子が生成した場合においても、粒径が小さい量子ドットのほうがアンチバンチングを示しやすい、つまり単一光子発生源として働きやすいことがわかった。また、短パルスレーザーで励起すると、単一光子発生確率が高くなることを初めて見出し、量子ドット内で起こる励起子ダイナミクスと相関付けて解釈した。2については、発光性色素として数種類のAtto色素を用い、キャスト法によりガラス基板上に単一量子ドット-色素(複数)複合体を作製し、その発光特性を検討した。量子ドットを選択的に光励起するとエネルギー移動により色素の蛍光が観測されることを見出し、その発光はアンチバンチング挙動を示すことを初めて見出した。つまり、1つの量子ドットから1つの色素ヘエネルギー移動が起こりアンチバンチング挙動が観測された。次に、単一量子ドット内に複数の励起子が生成した場合の挙動について検討を試みたが、高強度励起条件下では直接励起による色素からの発光も観測されたため、アンチバンチング挙動を正確に評価するには至らなかった。その他、エネルギーアクセプターとして銀ナノ粒子についても検討した。これらの結果は、太陽電池など様々な応用が期待される量子ドットの励起子ダイナミクスについて重要な知見を与えるものである。
|