本研究は直径12nm内部空洞7nmの球殻状タンパク質であるフェリチンタンパク質(Fer)と直径9nm、内部空洞4.5nmのリステリアDpsタンパク質(LisDps)の異なるタンパク質内部に大きさの異なるナノ粒子を作製し、接合する事でナノ電子デバイス用雪だるま型バイオナノパーツの創成と機能発現を目的としている。本年度は、Fer及びLisDps内部に大きさの異なる新規ナノ粒子の作製と化学的接合による雪だるま型バイオテンプレート(SMBT)の作製を進めた。昨年度までに成功しているCdSナノ粒子作製法を改良したslow chemical reaction systemを利用し、ナノ粒子合成条件の詳細な検討により、一溶液中で新規化合物半導体ナノ粒子であるZnS及びCuSナノ粒子作製に初めて成功した。作製したZnSナノ粒子はXRD等による構造分析より直径7nmの立方晶であり、さらに励起波長照射(350nm)により440nmに極大をもつ強い青色蛍光が確認された。また反応溶液中のアンモニア濃度を変化させる事で、作製したZnSナノ粒子の蛍光強度の制御できる事を発見した。これはナノ粒子内部の結晶性に由来してると推測している。また作製されたCuSナノ粒子は直径5nmのCuS立方晶である事が明らかになり、さらに溶液中のSイオンの濃度で粒子径及び結晶性が左右される事を発見した。CuSナノ粒子は近赤外域発光や電磁波遮断等の機能が期待されるため引き続き緒性質の検討を行っているら。以上の結果よりslow chemical reaction systemによる種々の大きさの異なる化合物半導体ナノ粒子が作製可能である事を証明した。本研究で開発したタンパク質-ナノ粒子複合体は今後の電子デバイス分野における応用展開に非常に重要なナノパーツとなるはずである。これらの成果は学会で発表され、現在それぞれの論文を投稿中及び投稿準備中である。またSMBTの作製については、水晶振動子(QCM)基板上への両タンパク質の結合及びFerとLisDpsの結合には成功したが、タンパク質の回収率が低いため、収率上昇のための条件検討を引き続き行っている。
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