色素増感型太陽電池の電極材料としてTiO_2について多くの研究がなされ、10%程度の変換効率を達成するに至っている。近年、多くの研究報告があるRu錯体(N719)色素において、色素からZnOとTiO_2への電子注入過程および電子注入効率は同様であるとの報告がなされた。したがって、ZnOを用いた色素増感型太陽電池の効率向上へ向けて、新たなる展開が期待される。しかしながら、ZnO電極を用いた研究において、変換効率は、大きく向上していない。 本研究では、ZnOのナノ構造を制御し、色素増感型太陽電池用の電極として適した構造を作製することで、変換効率の向上を目指している。ナノ構造制御の手法として自己テンプレート法を用いたナノ構造制御を行うことが大きな特徴である。自己テンプレート法とは、ナノ構造体形成物質として、金属有機塩の豊富な種類と多様な分子性結晶構造に注目し、金属塩を析出させ、その結晶構造に由来するナノ構造制御を行い、これを熱処理することによって金属塩の構造を維持したナノ結晶多孔質酸化物を得る手法である。この手法により、種々のナノ構造体の作製に成功している。自己テンプレート法によって得られた多孔質膜を用いた色素増感型太陽電池により、TiO_2にはまだ及ばないが、ZnOを用いた太陽電池としては比較的高い変換効率を達成している。今後、さらなるナノ構造制御を進めると共に、色素、電解液等の研究と合わせることで、変換効率の向上が期待される。
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