研究概要 |
本研究では、申請者が世界で初めて提案し、研究を進めてきた「膜マイクロ流路」と、その作製手法である「MeMEプロセス」という2つの基盤技術を駆使し、バイオチップやポリマー回路基板などを、高速かつ多品種生産できる、新原理の液体微細パターニング技術を確立することを目的としている。この膜マイクロ流路によるパターニング手法は、従来の鋳型を用いた転写の高速性と、インクジェットのような直接描画のフレキシビリティを兼ね備えるものである。 本年度は、初年度に開発した多孔質膜を用いて,パターニングのための多孔質膜マイクロ流路(膜マイクロ流路スタンプ)を作製し、各種基材表面に液体を連続的にパターニングできることを実証した。また、水溶性犠牲層を用いた改良MeMEプロセスにより、これまで離型剤への溶解性によって限定されていた多孔質膜材料の選択肢を大幅に広げることに成功した。さらに、犠牲層の作製方法の改善を進め、従来の犠牲層がない場合と同等の加工分解能を達成した。 開発したデバイスのバイオ分野への応用例として、コラーゲンなどの細胞接着因子を培養基材にパターニングし、細胞を任意の形状で培養できることも実証した。本手法では、流路内に流す液体の種類を変えるだけで、基材に転写する物質を速やかに変更することができ、また、流路内で試薬を調製することも可能であるため、今後、各種バイオチップの作製や、再生医療研究での細胞パターニングなどへの展開が期待できる。
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