研究概要 |
本研究の目的は, 光干渉現象を利用した高感度かつ微細な慣性力センサをMicro Electro Mechanical System (MEMS)技術を利用して作製することである. 具体的には, 単結晶シリコン(Si)を用いて導波路型光干渉計器を加速度センサに応用することを目標とした. 平成20年度は3年の実施期間の初年度として, (1)センサの設計および数値シミュレーション, (2)蒸気HFによるSiO2膜除去装置の作製, (3)中空構造を有する光導波路の形成を行うことを予定していた. 以下に各項目の達成状況を示す. (1) センサの設計および数値シミュレーション 慣性力センサを光導波路で作製するにあたり, 最も問題になるのは構造の微細さに起因する「質量の小ささ」にある. センサ感度は変位部の質量に比例するので, 十分な感度を確保するには質量の大きな「おもり」を付加する必要がある. 本研究では光学シミュレーションによる評価の結果, マルチモード干渉(MMI)技術を利用することで, 光特性に影響を与えることなく「おもり」を付加する領域が形成可能であることを見出した. 最終的に, マッハツェンダ光干渉計型の光干渉を利用し, 約1g(g : 重力加速度)の加速度印加により出力光を100%変調可能な, 高感度加速度センサの設計に成功した. (2) 蒸気HFによるSiO_2膜除去装置の作製 上記(1)で設計した光導波路には, 可動部形成の為の犠牲層除去機構としてHF蒸気によるSiO_2除去装置が必要となる. 今回, 研究代表者は新たに簡易かつSiO_2除去効率の高い蒸気HF装置を設計・作製した. (3) 中空構造を有する光導波路の形成 上記(2)で作製した蒸気HF装置を利用し, 光伝搬損失の低いSi光導波路を作製した. このとき, 蒸気HF装置を利用して犠牲層SiO2を除去したことによる光損失の増大は, 約0.7dB/cmと見積もられる.
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