研究概要 |
本研究は,超高感度な慣性力センサを,結晶シリコン製の光干渉器を利用して実現することを目的に実施した. 研究は概ね交付申請書に記載した実施計画に沿って実施された.まず,慣性力センサの基となる光干渉器の設計およびその光学シミュレーションを実施した.その結果,計画立案時に想定していた光干渉の方式であるリング共振器では逆に感度が高すぎ,不要なノイズを多く受信してしまうことが分かった.また更に実験を進めることで,光干渉方式としてマッハツェンダ干渉型を用いた場合に所望の特性を得られることが分かった.ただし,その感度を目的に合わせて調整するには,プルーフマス(重り)を付加する必要があること,これがセンサ信号を伝達する光を劣化させることも判明した.そこで,この光損失を低減する新たな方式を提案した.これはプルーフマスを付加した片持ち梁と光導波路を多モード干渉(MMI)光導波路を介して交差させる方式で,本方式を用いることにより,20dB以上の損失を1dB以下に抑制可能であることをシミュレーションと実験の双方により確認した 次に,実際にセンサを作製する為の作製方法の確立実験を行った.研究計画時には,ここで様々な材料の利用を想定していたが,設計の工夫により結晶シリコンのみを利用して目的のセンサを作製可能となった.また,ここで光導波路の浮遊化(両持ち梁構造化)というプロセスが必要であったが,結晶シリコン層下部の酸化シリコン層を蒸気フッ酸で除去することにより実現した. 最終的に,マッハツェンダ型光導波路を利用した加速度センサを作製し,これに力を印加して出力変化を測定した.その結果,力印加に対して最大で0.7dBの出力変化が観測された.したがって,本研究の目的である慣性力センサの開発に成功したと言える.
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