平成20年度は、局在プラズモン共鳴(LSPR)の反応場として、種々のナノ構造体をナノインプリンティング法により作製し、さらに金を蒸着後、形状変化と電場増強の関係性を検討した。本研究では様々な形状のナノホールアレイを作製した。はじめに、ホールの直径を300nmで統一し、そのホールの深さを50、100、150nmと変化させることにより、深さ方向による吸収ピーク波長変化について検討した。その結果、屈折率変化に対する感度については3種類の基板とも大きな違いはなかったものの、ホールの深さが50nmの時に最も先鋭な吸収ピーク波長を確認することができた。続いて前述の結果よりホールの深さを50nmに統一し、ホールの中心間距離を400、500、600、900nmと変化させることで、LSPRとホールの中心間距離の関係性を検討した。その結果、中心間距離を増大するほど、LSPR由来の吸収ピーク波長が長波長側にシフトすることを明らかにした。同時に中心間距離の増大とともに、屈折率に対するLSPRシフト量が増幅することを明らにした。屈折率変化に対するLSPRシフト量の関係には、極めて高い相関(相関係数0.999以上)を有していることを確認した。以上の結果より、ホールの深さ、中心間距離を最適化することで、高感度かつ精緻なLSPR現象をベースとしたセンサを作製できる見込みを得た。また、中心間距離を制御することで吸収ピーク波長を自由に決定できることから、可視光領域での簡便な生体試料分析への応用が可能であることが示唆された。さらに複数の中心間距離を有するナノホールアレイを作製することで多成分同時計測への応用も可能であると考えられる。
|